日本は海外の冬季五輪史上最多の124人の選手を送る。中でも注目すべきはフィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手。五輪3連覇と史上初の4回転アクセル成功をめざす。
本届北京冬奥会上,日本派出了124位运动员参赛,是向海外派出运动员最多的一届冬奥会。其中最受关注的就是男子单人花滑运动员羽生结弦。本次冬奥会上,他以奥运三连霸和史上首次阿克塞尔四周跳(4A)为目标站上赛场。
「五輪代表のジャージーに腕を通した時に『ああこれが五輪だな』って。3連覇を決意したのはその時です。すでに2連覇も持っていて、(タイトルを)失うことは怖いんですよ。今のところは負ける確率は平昌五輪より高いです。ただユニホームを着た時に『これは勝ちにいかないといけないんだな』と思わせていただきました」
“接过冬奥会运动员外套时我真切地感受到‘这就是奥运会’。也是那个时候,我决心拿下三连霸。当时我拿下奥运两连霸时,是很害怕丢掉这个位置的,这次失败的可能性要比当年平昌冬奥会高。不过,当我穿上制服的时候就想着‘这次我必须获得胜利’。”
彼にとって3度目の五輪。「何が何でも勝つ」と燃えていた2大会とは異なり、「夢をかなえるために勝つ」という。
北京冬奥会是羽生结弦参加的第三届冬奥会。比起前两次冬奥会上的“无论如何也想的第一”的想法,这次的羽生是“为了实现梦想而争取胜利”。
昨年12月、北京五輪の代表最終選考会である「全日本フィギュアスケート選手権大会」が行われた。怪我からの復帰戦かつ今シーズン初戦、全日本2連覇と五輪選考がかかる緊張感と重圧の中でも、羽生結弦が圧巻の演技を披露。合計322・36点というハイスコアで2年連続の優勝を飾った。
去年12月,日本举办了“全日本花样滑冰锦标赛”,选出北京冬奥会参赛选手。这是羽生结弦受伤后的复归赛,也是本赛季首场比赛,在全日本锦标赛两连霸和冬奥参赛资格的双重紧张感和压力下,羽生结弦展现了他高超的表演,以322.36的高分拿下了锦标赛两连霸。
昨季から継続のフリー「天と地と」では壮大な音楽に合わせ、自身が尊敬し共感しているという軍神・上杉謙信公を演じ切った。冒頭の4回転半は両足での着氷になり認定とはならなかったものの、その後のジャンプは完璧な出来。ステップやスピン、一つ一つの所作や指先など細部までこだわり、昨季と同じでありながらまったく違うプログラムに感じられた。
自由滑曲目选择上,羽生继续选择了自上一赛季便开始使用的《与天共地》,配合着壮阔的音乐,他在冰上诠释了自己尊敬热爱的军神上杉谦信。虽然开头的四周半因双脚落地成绩失效,但之后的所有跳跃动作都十分完美。每一个舞步和旋转都细致到了指尖,虽然内容和上个赛季一样,但整个节目看起来却又完全不同。
2014年のソチ、2018年の平昌と五輪2連覇を達成した金メダリストでありながら、さらなる前人未到の偉業に挑み続ける挑戦者でもある羽生。そんな彼のこれまでの道のり、そして原点として、今こそ見返しておきたいのが過去の大会の数々だ。
羽生结弦在2014年的索契冬奥会和2018年的平昌冬奥会上连续两次获得金牌,但他仍然是一个不断挑战前所未有高难度动作的挑战者。下面就带大家来回顾一下他一路走来的挑战之路和花滑初心。
2006年の「全日本ノービス選手権大会」ではノービスAで3位を記録し、初々しくも堂々とした演技を見せた羽生。「全日本フィギュアスケートジュニア選手権」では、ノービスで優勝を果たして出場した2007年に3位になり、翌2008年には町田樹ら先輩選手を抑えて初優勝を果たした。
2006年,羽生结弦在“日本初级花样滑冰锦标赛”A组获得铜牌,在冰场上展示了他纯真精湛的表演。而在“日本青年花样滑冰锦标赛”中,羽生作为初级A组冠军参赛并获得铜牌,第二年2008年便超越町田树等前辈首次获得冠军。
4回転サルコウ成功とフリー技術点100超えを目指した2013年や、4連覇を達成しながらも悔しさを強くにじませた2015年、5年ぶりの出場でフリーはノーミス演技を見せた2020年大会などが印象深い。それぞれのプログラムで自らの課題に向き合い、その時その時の全力を尽くした演技を披露していることが分かるはずだ。
之后2013年,他以完成后内结环四周跳(4S)和自由滑技术动作分超过100分为目标,2015年,达成四连冠的羽生依旧抱有强烈的悔意。在2020年的比赛上,时隔五年的自由滑零失误表现让观众印象深刻。他的每一场比赛都是直面自己的一场挑战,也让我们感受到他每一次的表演都在全力以赴。
3連覇の権利は僕だけ
三连霸的权利在我手上
19歳で臨んだソチ五輪は、パトリック・チャン(カナダ、当時23)が優勝候補として君臨していた。羽生はシーズン前半を通して急成長し、チャンを追い越した。当時の羽生は「演技構成点では追いつけないので、僕はジャンプ。2種類の4回転を入れる選手は少ないので、そこは僕の強みにしたい」と語っていた。若く、がむしゃらに、勝利だけを目指してジャンプを跳びにいく選手だった。
19岁的羽生结弦在参加索契冬奥会时,当时23岁的加拿大选手陈伟群作为冠军候选人实力雄厚。羽生通过前半个赛季急速成长,超越陈伟群获得冠军。当时羽生曾说:“因为我很难在节目内容分上超越他,所以我就要努力跳起来。很少有选手会在一场比赛中加入两个种类的四周跳,所以我想把它当做我的强项”。当时的羽生,是一个年轻又奋不顾身地,为了胜利不断跳跃的选手。
平昌五輪は、世界最高得点保持者でありながらもシーズン中にけがをして迎えた。すでに4回転ループもルッツも成功していたが、23歳の身体と対話し、五輪は2種類の4回転で戦った。
平昌冬奥会上,羽生是世界最高分保持者,但在比赛过程中却意外受伤。已经成功挑战后外结环四周跳(4Lo)和勾手四周跳(4Lz)的羽生在和自己23岁的身体进行“对话”后,在冬奥会的赛场上再次挑战两种四周跳。
「ジャンプだけでなく、プログラムをトータルパッケージとして見せることが大切」という信念のもと、自身の世界に引き込む演技を貫く。演技を終えた瞬間には「(自分自身に)勝ったと思った」という大会だった。
在“这不仅是一个跳跃,重要的是,这是整个节目中的一部分”的信念支撑下,他沉浸于自己的世界中展现了惊人的表演。这场比赛结束的一瞬间,他“觉得我赢(过了自己)了”。
3度目は何を思い描くのか。
第三次的冬奥会,他是怎么想的呢。
「僕にとって平昌五輪までが小さい頃から描いていた夢であり、目標でした。ただ今、僕には挑んでいる技があり、そして3連覇という権利を有しているのは僕しかいない。夢の続きをしっかりと描いて、また違った強さで五輪に臨みたいと思います」
“对我而言,到平昌冬奥会为止都是在完成我小时候的梦想和目标。现在,我有极具竞争力的技术,还有挑战三连霸的权利。我想继续我的梦想,用更加强大的姿态站上冬奥会的赛场”。
羽生にとって北京五輪は、勝つことだけが目的ではない。4回転アクセルという“高い頂”を見上げているのだ。
对羽生而言,北京冬奥会的目标不仅仅是冠军,还有完成“超难度动作”阿克塞尔四周跳(4A)的梦想。
羽生が4回転アクセルに挑み始めたのは平昌五輪後。平昌でも、試合が終わりエキシビションまでの期間に、飛距離のあるトリプルアクセルを何度も練習し、意欲をみなぎらせていた。
羽生是在平昌冬奥会后开始挑战4A的。平昌比赛之后到表演滑之间,他多次练习了十分要求跳跃距离的阿克塞尔三周跳(3A),可见其野心。
しかしこの4回転アクセルは、想像を絶する怪物だった。
然而,4A却是一个让人难以想象的怪物。
「正直、平昌五輪の次のシーズンには降りられると思っていました。それくらいアクセルには自信がありましたし、4回転半というものがそんなに大変だという自覚をしていませんでした。ただ集中してやればやるほどけががつきまとい、また4回転以降を回ることがどれだけ大変かを痛感したこの4年でした」
“说实话,我之前觉得平昌冬奥会之后的下一个赛季能完成4A,因为我对自己的阿克塞尔跳很有信心,也没有意识到四周半旋转是多么困难的一件事。但是,每次全力以赴的尝试总会伴随着伤痛,这四年以来我真切感受到了四周之后的旋转是多么困难”。
回ることで精いっぱい
光是旋转就已经拼尽全力
「色々なことをやりましたが、スピードをつけて跳ぶと頭から落ちる可能性もありますし、回転がかからないんです。現状は回ることで精いっぱい。」
“我做了各种尝试,如果在速度很快的时候起跳的话很容易摔到头,没有办法旋转。目前来看,我光是旋转就已经拼尽全力了。”
20~21年シーズンは肉体改造に走った。20年12月の全日本選手権に現れた羽生は、明らかに胸板が厚くなり、脚も一回り成長。21年3月の世界選手権での初挑戦に向けて練習を重ねたが、完成は間に合わなかった。
2020年~2021年的赛季,羽生主攻增肌。2020年12月,出现在全日本锦标赛的羽生胸部明显变厚,腿部也壮了一圈。虽然他朝着在2021年3月的世界锦标赛上首次挑战4A而不断练习,但最终却没能如愿。
「入れないと決めたのは、世界選手権に出発する3日前です。かなり死ぬ気でやって、アクセルだけ2時間ぶっつづけという練習もありました。あと8分の1回ればランディングできます。ただ、かなり身体を酷使して痛む部分がでてきています」
“我是在前往世界锦标赛的前三天决定不把4A加入到比赛动作当中的。虽然我为此一直在拼死练习,每天要花两个小时疯狂练习阿克塞尔跳。还剩1/8就能落地了,但身体却吃不消十分疼痛”。
4月の国別対抗戦では練習で4回転アクセルに挑戦。4回転と4分の1ほど回り、転倒した。
在4月的世界花样滑冰团体锦标赛练习时,羽生再次挑战了4A,旋转了1/4左右后摔倒。
「最初から浮かず、自分にとってはかなり感触の悪い4回転でした。やはり、高さと回ることの両立がかなり難しいジャンプです。跳べている夢は3回くらい見ました。すごく生々しく。がむしゃらさも備えつつ、冷静に分析もしながら、自分の限界に挑み続けたいと思います」
“一开始就没跳起来,我自己也觉得这个4A很不好。果然4A是一个高难度动作,需要兼顾高度和旋转。我曾经三次梦到过自己成功了,活生生的。今后我也会拼尽全力练习,冷静下来分析,继续挑战自己的极限”。
そして迎えた今季。羽生は、またアプローチを変えた。今度は体重を3キロ減らしたのだ。そして全日本選手権の練習で見せたのは「回転軸を作る」という動作の繰り返しだった。
时间来到本赛季。羽生又转变了自己的方向,这次他减重三公斤,在全日本锦标赛的练习过程中,我们看到了他“制造旋转重心”的动作练习。
トリプルアクセルを跳び、その直後に3回転ループを跳ぶ。または、トリプルアクセルの着氷後にツイズルという回転動作をする。これはすべて、着氷で回転軸を右側に残しておき、右足での着氷につなげる基礎練習だった。
一套阿克塞尔三周跳接后外结环三周跳(3A+3Lo)的动作。或者是阿克塞尔三周跳落冰后接捻转步。这些都是落冰之后将旋转重心移至右侧,练习右脚落冰的基础练习。
羽生はこう説明した。
对此羽生是这样解释的:
「自分のなかでは、軸作りが一番大事だと思っています。今日は軸がうまくいったパターン。もう一つは回転を11割の力で回して、ぎりぎり4分の1足りないくらいで転ぶというもの。今の段階では、その二つを両立したものは難しいです」
“我认为重心是很重要的。今天是重心把握好了的情况,还有一种情况就是尽110%的力量旋转,刚刚好转到还剩不到1/4的程度。在现阶段,能同时做到这两点就已经很难了”。
無限の力が支えるよう
为了有无穷的力量支撑
本番は、やはりスピードを落とし、慎重に4回転アクセルを踏み切る。4回転まわったところで両足着氷すると、回転軸を右にキープしているため転倒せず、右足での着氷姿勢へとつなげた。真骨頂はこの後。残る4回転3本を含むプログラムをパーフェクトに滑り切る。冒頭で4回転アクセルに挑んだ疲れなど感じさせず、呼吸の乱れも少ない。無限の力が羽生を支えているかのような、“4回転アクセルの初演”だった。
正式比赛中,他选择降速后小心地跳出4A。旋转四周两脚落冰之后,因为重心保持在右侧所以不会摔倒,之后再接一个右脚落冰姿势。最重要的就是这之后。他还要完美地完成剩下的三个四周动作和整套节目。一开头的4A不能让他觉得疲惫,也不能因此打乱呼吸节奏。这次的“4A首次演出”,羽生仿佛有着无穷的力量在支撑着他。
「まあ頑張ったなという感じです。(回転の軸を取ることが)できるようになったのはここ2週間くらい。軸を作りきれる自信が出来てから、100%の力で回り切るということをやっていかないとダメなので。試合であれだけ出来たら、妥協できるところ。悔しいですけれどね」
“我觉得自己很努力了。我也是最近两周才能(把握好旋转重心)。自从有了做出重心的自信之后,我就必须在每次旋转时都百分百用尽全力。比赛过程中能做到这样我也很满足了,虽然还是有些不甘”。
そして羽生は言う。
接着,羽生说道:
「9歳の頃の『何をやっても勝てる』みたいな自信が、勝つことに関しては一番必要だと思います。でも4回転アクセルに対しては、そうではない。無邪気にがむしゃらにやって跳べるジャンプじゃないというのを、この4年間ずっと壁にぶち当たりながら考えてきました。どれだけ緻密に計算し、戦略を立て、4回転半という成功をつかみ取れるかが大事だと思っています」
“我觉得我9岁时‘做什么都要赢’的自信在争夺胜利上是十分必要的。但是在4A上却不是这样。这四年间,我一边碰壁一边思考,这不是闷头拼命跳就能完成的动作,最重要的是缜密的计算和精确地战略,才能让我成功地完成四周半的跳跃”。
9歳の無邪気な自信。19歳の勝利への意欲。23歳での勝ちにいく戦略。その先に、27歳の羽生がいる。何より面白いのは、23歳の時よりベテランの守りに入るのではなく、むしろ挑戦者に戻ったことだ。
9岁时纯真的自信,19岁时对胜利的渴望,23岁时为了取胜的战略,这才有了27岁的羽生结弦。最耐人寻味的时,比起23岁的自己,羽生结弦没有选择守卫自己的不败之地,反而回到了一个挑战者的姿态。
ショートプログラムでは氷の穴にはまるアクシデントでまさかの8位となった羽生選手はフリー演技の最初のジャンプでこれまでまだ誰も飛んだことがない4回転半ジャンプ・クワッドアクセルに挑戦したものの転倒。続くジャンプでも2度目の転倒をするなどジャンプにやや精彩を欠いた。その後の演技をまとめショートプログラム8位から4位に順位をあげたものの、悲願の五輪3連覇はならなかった。
在短节目中冰刀意外踩入冰坑导致最终排名只有第八位的羽生结弦在自由滑比赛中的第一个跳跃动作就是前无古人的阿克塞尔四周跳(4A),以摔倒告终。接下来的跳跃动作中他再次摔倒,整体状态欠佳,比赛结束后,羽生的综合成绩从第八位升至第四位,抱憾无缘冬奥会三连霸。
羽生はNHKの中継で応じたインタビューで「全部出し切ったっていうのが正直な気持ちです。あきらかに前の大会よりもいいアクセル跳んでましたし。もうちょっとだったなと思う気持ちももちろんあるんですけど。でも…あれが僕の全てかなって」などと語った。
面对NHK的直播采访,羽生称“说实话,我已经把自己的全部都发挥出来了,4A也明显比之前跳得更好。当然也觉得还差一点点了,不过,我想这就是我的全部水平了”。
また「もちろん、ミスをしないっていうことは大切だと思いますし、そうしないと勝てないっていうのは分かるんですけど。ある意味、なんか、あの前半2つのミスがあってこそのこの『天と地と』っていう物語がある意味、できあがってたのかなって気がします」と振り返った。
之后,他还复盘“当然不出现失误是很重要的,我也知道有失误就赢不了的。不过从某种意义上来说,前半段的两个失误也成全了《与天共地》这个故事,我是这么觉得的”。
自身が刻んだ挑戦については「一生懸命頑張りました。正直、これ以上ないぐらい、頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないですけど、でも…うん、確かにショートからうまくいかないこともいっぱいありましたけど、むしろうまくいかなかったことしかないですけど、今回。でも一生懸命頑張りました」と語った。
关于自己的挑战,他最后说道:“我真的已经拼尽全力了。说实话(在4A上)我付出了前所未有的努力。我也知道这些努力可能不会有回报,但是,的确从短节目开始就有很多不顺利的事情,或者可以说这次就没有什么很顺利的事情。但是我已经全力以赴了”。
羽生は常に挑戦の姿勢で、"ありたい自分"やその時点の目標に向かってひたむきに努力し、進化し続けている。
羽生结弦,一个永远以挑战者的姿态站在冰场上,为了“心中的自己”和当下的目标而拼尽全力,不断进化着的花滑选手。
翻译为高顿日语原创,未经许可禁止转载
翻译为高顿日语原创,未经许可禁止转载